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 ・オメガ3(EPA/DHA)

生活習慣をサポートする『オメガ3脂肪酸 (前編)』


第8回の今回は、厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2005年版)」の中でも 「生活習慣病予防に重点を置き、今後摂取量を増やすべき栄養素」として位置づけられている 「オメガ3脂肪酸」 についてです。

オメガ3脂肪酸には多くの研究が行なわれており、既に様々な働きが確認されているため、第8回と第9回の2回に分けてじっくりと掘り下げたいと思います。
というわけで、今回は 「前編」 です。

 オメガ3脂肪酸とは



オメガ3脂肪酸は不飽和脂肪酸の1種。主に魚の油に含まれるDHAやEPA、フラックスシードオイルや菜種油などに含まれるα-リノレン酸などがあります。
DHAやEPAなどは、「脳の働きを良くする」 、「血液をサラサラにする」 とされ、これらの成分を配合した多くの製品が流通しています。
フラックスシードオイルについても、サプリメントの素材として一般化しており、もはや 「定番」 になっていると言っても良い程です。

 オメガ3脂肪酸の効用



“生活習慣病予防” のために積極的な摂取が勧められているオメガ3脂肪酸ですが、実際にどのような健康効果があると考えられているのかを確認してみましょう。

○循環器系疾患の予防作用
オメガ3脂肪酸と循環器系疾患との関係は、グリーンランドのイヌイットやアラスカのエスキモーが、かなりの高脂肪食を摂取しているにも関わらず、循環器系疾患にかかる割合が極めて低いことが明らかにされたことがきっかけ。
彼らの血液はコレステロール値は低く、反対にEPA濃度が高いことが確認されています。

このことから、EPAには医薬品としての可能性が見出され、日本では1990年に「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛、冷感の改善」、1994年に 「高脂血症」の治療薬として、世界に先駆けて認可されました。
また米国でも、EPAとDHAを主成分とした 「OMACOR(※)」 が、高脂血症治療薬としてFDAに認可されています。
※OMACOR:1粒中にエステル化させた、EPA480mgとDHA380mgを含有する高トリグリセリド血症(高脂血症の1つ)治療薬。

上述のように、高脂血症治療薬として認められている他、オメガ3脂肪酸には、循環器系疾患の予防に役立つ様々な働きが認められています。

動脈硬化や心筋梗塞などの循環器系疾患が引き起こされる原因に、血管内皮の障害と炎症が挙げられます。
フリーラジカルなどの酸化ストレス、アンジオテンシンIIなどの炎症性物質によって血管内皮が傷つき炎症が起こると、その部分では酸化LDLコレステロールが取り込まれ、血管内腔が狭くなる粥状動脈硬化が進行。
その部位には血小板が付着し、心筋梗塞の原因となる血栓が形成されます。また、血管壁が肥厚するため、血圧が上昇し高血圧の原因になります。
しかし、EPAやDHAを摂取すると、血小板凝集抑制作用のあるEPA由来のトロンボキサンが増え、それにより、血小板がくっつきにくくなります。
また、炎症性物質の合成抑制と血中LDLコレステロール低下作用により、粥状動脈硬化の進行を遅らせる働きもあります。

このように、オメガ3脂肪酸は循環器系疾患が引き起こされる一連の反応を、「複数のステップで」 抑制する働きがあると考えられているのです。
(Am J Clin Nutr. 2000 Apr;71(4):914-20.)
(Am J Clin Nutr. 1997 Oct;66(4 Suppl):1020S-1031S.)
(Ann N Y Acad Sci. 1993 Jun 14;683:16-34.)
(Cardiovasc Res. 2001 Dec;52(3):361-71.)
(J Nutr Biochem. 2003 Sep;14(9):513-21.)

<関連した研究論文>
【N-3系脂肪酸の摂取は、炎症バイオマーカー血管内皮活性と相関がある】
(J Nutr. 2004 Jul;134(7):1806-11.)
N-3系脂肪酸の摂取と、炎症性バイオマーカー及び、血管内皮活性には負の相関があると仮定し、727人の女性を対象にその評価を行った。その結果、N-3系脂肪酸を最も多く摂取している女性のグループは、最も摂取量が少ないグループと比べ、CRP(※1)レベルで29%、IL-6(※2)レベルで23%、E-セレクチン(※3)レベルで10%、可溶性細胞内粘性分子レベルで8%低値を示した。
この結果、N-3系脂肪酸は炎症バイオマーカーと血管内皮活性と関係があり、N-3系脂肪酸の摂取は、循環器系疾患の予防に役立つことが説明できる。
※1 CR-P(C反応性タンパク):急性相反応物質と呼ばれる炎症性疾患で上昇する蛋白の一種
※2 IL-6(インターロイキン6):多発性骨髄腫の悪性細胞増殖因子で、さまざまな炎症性疾患や自己免疫疾患に関与。
※3 E-セレクチン:血管内皮細胞表面に存在する細胞接着分子。炎症部位や血管新生部位での発現が見られる。

このように、多くのインビトロ、インビボ試験により、オメガ3脂肪酸には循環器系疾患の予防効果があることが立証されており、米国の専門家の間ではEPAとDHAを次のような量で摂取することを推奨しています。

 ・循環器系疾患の予防:1200mg/日以上、より強い働きを求める場合は1800mg/日
 ・高中性脂肪血症の改善:1200〜3000mg/日

○悪性腫瘍に対する働き
悪性腫瘍に対する働きが期待できるとされる食品は多くありますが、オメガ3脂肪酸にもそうした働きが期待できるようです。

発がんのメカニズムは、正常な細胞が遺伝子の変異を起こし、がん細胞となる段階(イニシエーション)から、細胞の増殖が進んでいく段階(プロモーション/プログレッション)によって説明されますが、オメガ3脂肪酸は、「がん化が引き起こされる前段階で “予防的な働き” をもつ」 と考えられています。
また、炎症性物質の合成を抑制することも、細胞のがん化を抑制すると推定されています。

DHAとEPAを用いたインビトロ試験と動物試験では、前立腺がん細胞と乳がん細胞の増殖を抑制することが確認されています。
また、別の実験では、がん細胞の増殖と転移にかかわる細胞膜上の受容体の発現を阻害し、がん細胞の増殖に必要とされる血管新生を阻害する働きがあることも示唆されています。
その他、オメガ3脂肪酸には 「抗がん剤の効果を高める」 働きも期待されています。
細胞膜に高濃度のDHA が存在するがん細胞の場合、ドキソルビシン(抗がん剤)に対する感受性が高くなることで、細胞のアポトーシス(自滅)が引き起こされました。
また、DHAとタキソールなどのタキサン系抗がん剤を併用した場合でも同様の働きが確認され、これは、DHAをあらかじめ投与させておいた場合でも効果が確認されています。
がん患者に対して予めDHAを摂取させた上で抗がん剤を服用させれば、抗がん剤の働きが高められる可能性が見出されているのです。
(Proc Soc Exp Biol Med. 1997 Nov;216(2):224-33)
(Am J Clin Nutr. 1997 Dec;66(6 Suppl):1513S-1522S)
(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2003 May;68(5):337-42.)
(Free Radic Biol Med. 2005 Sep 15;39(6):742-51.)
(Eur J Cancer Prev. 2005 Jun;14(3):263-70.)
(Br J Cancer. 2006 Mar 27;94(6):842-53.)
(Int J Cancer. 2006 Aug 18;)
(Breast Cancer Res Treat. 2006 Jul 6;)
(J Nutr. 2004 Sep;134(9):2487S-2491S.)

<関連した研究論文>
【がん治療の働きを高めるオメガ3脂肪酸】
(J Nutr. 2002 Nov;132(11 Suppl):3508S-3512S.)
オメガ3脂肪酸を摂取させると、がん細胞の増殖が遅くなり、化学療法の効果が高まることに加え、化学療法による副作用の発現が抑えられたことが動物実験で確認された。
分子レベルでのオメガ3脂肪酸のメカニズムは、1)腫瘍内でのシクロオキシゲナーゼ2の発現を抑制し、がん細胞の増殖と腫瘍内の血管新生を低減させる、2)AP-1(Activator protein-1:転写因子)とRASタンパク、2種のがん遺伝子の発現を抑える、3)がん細胞の分化を誘導する、4)KappaBの活性化、bcl-2の発現を抑制し、ガン細胞のアポトーシスを促す、5)がんによる悪液質を緩和する、といった複数の有効性をもつことが推定される。
がん治療を受ける患者は、オメガ3脂肪酸を摂取することで、がん細胞の増殖、転移を抑えることが出来る可能性があり、また生活の質が高まる可能性がある。

 まとめ



循環器系疾患や悪性腫瘍に対する働きが期待できるオメガ3脂肪酸。
もともと魚を摂取する機会の多い日本では、アメリカ程にはオメガ3脂肪酸の摂取不足を心配する必要はないかもしれません。
しかし、食生活の欧米化によって上述のような疾患への罹患は明らかに増加しており、オメガ3脂肪酸の積極的な摂取を心がけることで、これらの疾患の予防に役立てたいところです。
「後編」 では、オメガ3脂肪酸と 「脳と精神・認知機能」、「アレルギー」、「骨」 との関係についてお話します。

<参考>
PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=PubMed

オメガ3(EPA/DHA)
http://www.supmart.com/omega3/









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