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 ・オメガ3(EPA/DHA)

生活習慣をサポートする『オメガ3脂肪酸 (後編)』


第9回の今回は、第8回に引き続き、様々な有効性が期待されている 「オメガ3脂肪酸」 の後編です。今まであまり知られていなかったオメガ3脂肪酸の働きをみてみましょう。

 オメガ3脂肪酸の効用



○脳に対する働き
DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸は、“脳” に対しても様々な働きが期待できることが、多くの実験から明らかになってきています。

NIH(National Institute of Health)の研究者は、オメガ3脂肪酸を多く含む食事を摂取する地域ではうつ病にかかる人の割合が低く、逆に、オメガ3脂肪酸が少ない食事を摂取する地域ではうつ病にかかる割合が高いことを発見しました。
また、血中のオメガ3脂肪酸レベルの低下と、自殺リスクの増加には相関関係があるという報告もされています。

さらに、薬を服用していないうつ病患者を2年間追跡調査した研究では、オメガ3脂肪酸の血中濃度の低い人は、自殺行動を起こすリスクが高まる可能性が指摘されています。
また、別の研究はオメガ3脂肪酸に抗うつ薬の作用を高める可能性があることを指摘しており、オメガ3脂肪酸の摂取は、薬の服用時、非服用時、ともにうつ状態の改善について有効に働くことが示唆されています。

その他、ADHD、統合失調症、アルツハイマー疾患のような精神・認知に関する疾患を患う人は、血中のオメガ3脂肪酸レベルが低い人が多いことから、このような精神・認知に関係する疾患に対し、オメガ3脂肪酸は何らかの有効性が期待できます。
また、ADHD患者にオメガ3脂肪酸を摂取させた試験では、注意力の乏しさや過剰行動に改善が見られています。

更なる研究が必要ではありますが、オメガ3脂肪酸の摂取は、一部の発達障害をもつ子供の学力の向上に対する有効性も示されています。
もちろん、一般の人についても、オメガ3脂肪酸の摂取は、精神・認知機能に対して有効であり、健康なヒトを対象にオメガ3脂肪酸を1ヶ月にわたって摂取させた結果、気分の高揚、注意力、認識力の向上が見られたという報告もあります。
※実際、イギリスでは、高齢者の認知機能と視覚に対するオメガ3脂肪酸の有効性を明らかにするための大規模な試験が進行中です。
(Lipids. 2000 Aug;35(8):863-9)
(Int Rev Psychiatry. 2006 Apr;18(2):155-72.)
(Am J Psychiatry. 2006 Jun;163(6):1100-2.)
(Biol Psychiatry. 2004 Oct 1;56(7):490-6.)
(Nutr Rev. 2000 Apr;58(4):98-108.)
(Reprod Nutr Dev. 2005 Jan-Feb;45(1):1-28.)
(Annu Rev Cell Dev Biol. 2005;21:633-57.)
(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2006 Aug 29;)
(Int Rev Psychiatry. 2006 Apr;18(2):155-72.)
(CMAJ March 5, 2002; 166 (5))
(Eur J Clin Nutr. 2006 Jul;60(7):882-8. Epub 2006 Feb 8.)
(Nutr J. 2006 Aug 31;5:20.)

<関連した研究論文>
【オックスフォード-ダーハム研究:発達性協調運動障害児の脂肪酸サプリメント摂取ランダム対照試験】
(PEDIATRICS Vol. 115 No. 5 May 2005, pp. 1360-1366 (doi:10.1542/peds.2004-2164)
就学児童の約5%は、発達性協調運動障害(Developmental coordination disorder:DCD) があるとされている。DCDは、根本的な運動機能の欠如に加え、発達障害には、学習、行動、社会的行動に対する適応困難が見られる。
蓄積されたエビデンスでは、ある種の多価不飽和脂肪酸の不足は、神経発達と精神障害(失読症やADHDなど)と関係があるとされていることから、DCDに対する有効性について試験を行った。
5〜12歳のDCD児童117人に、ランダム対照試験で3ヶ月間オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸を摂取させ、パラレル試験のため、プラセボ群にはその後3ヶ月間オメガ3脂肪酸を摂取させた。
その結果、オメガ3脂肪酸を摂取させた群には、行動機能には大きな変化は見られなかったものの、プラセボ群と比べて読み書きと行動については著しい改善が認められた。また、クロスオーバー試験の後、プラセボ群にも同様の効果が見られた。
これにより、オメガ3脂肪酸には、発達性障害児の学習と行動に対する有効性が確認された。

 ・摂取必須脂肪酸:80%フィッシュオイル+20%イブニングプリムローズオイル
 ・1日の摂取量:EPA558mg、DHA174mg、リノール酸60mg+9.6mgVE(天然型:
  アルファトコフェロール)

○骨に対する働き
カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどは、骨の健康維持に大切な栄養素として知られていますが、オメガ3脂肪酸も骨の健康には一役買っているようです。

骨は、「骨芽細胞」 の働きによる「骨形成」と、 「破骨細胞」 による 「骨吸収(破壊)」を繰り返す 「骨代謝」 によって、健康が保たれています。
しかし、このバランスが崩れると、骨は密度を維持できなくなるのです。
加齢とともに骨芽細胞の数は減少し、骨形成能は低下しますが、破骨細胞の数と働きは、歳をとっても変わらないため、男女とも加齢により骨密度が低下し、骨粗しょう症になりやすくなります。
また、女性の場合、閉経後はホルモンバランスの変化によりカルシウムの吸収低下も同時に起こるため、骨粗しょう症の程度は深刻となります。

オメガ3脂肪酸には、骨密度の減少を防ぐ働きが動物試験で確認され、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸、オメガ3と6の混合物を与えた場合、オメガ3脂肪酸のみを与えたものの骨密度が最も高く、また骨形成に関わるホルモン、ビタミンD3や骨型アルカリフォスファターゼ活性が高く、また尿中にカルシウム排泄も少ないことが確認されています。
その一方で、オメガ6脂肪酸を与えられていたものの場合、骨吸収に関係する物質が多く認められています。

また、骨形成に対しては、EPAよりもDHAの方が有効性が高く、女性の閉経後の骨粗しょう症モデルの動物試験では、DHAの摂取により、骨密度の低下が抑制されています。
ヒトでの具体的な試験は今のところありませんが、1992年から1998年まで1500人の男女の食事の嗜好を調査したデータでは、オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の摂取比率で、オメガ6脂肪酸を多く摂取する傾向が高いグループほど骨密度が低く、また、オメガ3脂肪酸を多く摂取するグループの方が骨量が多いことが確認されています。
その他、やはり動物試験によるものではありますが、骨や歯の健康に役立つ可能性や、骨関節炎やリューマチ性関節炎の炎症とそれに伴う骨粗しょう症のリスクを抑える可能性について言及した研究報告もがあります。
(J Nutr Biochem. 2006 Apr;17(4):282-9. Epub 2005 Jun 21.)
(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2005 Nov;73(5):327-34.)
(J Dent Res. 2006 Jul;85(7):648-52.)
(Am J Clin Nutr. 2005 Apr;81(4):934-8.)
(Nutr Metab (Lond). 2005 Oct 10;2:26.)
(Am J Clin Nutr. 2006 Jun;83(6 Suppl):1505S-1519S.)
(J Rheumatol. 2000 Oct;27(10):2343-6.)
(Arthritis Rheum. 1995 Aug;38(8):1107-14.)
(Br J Nutr. 2006 Mar;95(3):462-8.)

<関連した研究>
【C57BL/6老齢雌マウスでの骨密度におけるフィッシュオイルの効果】
(J Nutr Biochem. 2006 Sep 7;)
コーンオイル(オメガ6脂肪酸)とフィッシュオイル(オメガ3脂肪酸)を、C57BL/6老齢雌マウスに6ヶ月間与え、骨密度を測定したところ、フィッシュオイルを与えられていたマウスの骨密度の方が高く、骨形成マーカーであるアルカリフォスファターゼとオステオカルシンの血漿中濃度は上がっていた。
また、フィッシュオイルを与えていたマウスの骨髄細胞培養では、破骨細胞の発生が低かった。
オメガ3脂肪酸含有オイルは、骨形成と骨吸収を調節することにより、加齢による骨密度変化に対して有効な働きを持つ可能性がある。

○アレルギーに伴う炎症に対する働き
アレルギーは、アレルゲン(抗原)と抗体が結合することで、細胞から様々な化学伝達物質が放出され、それに伴って種々の炎症性物質が生成されて、各組織で炎症が起こることで生じます。つまり、アレルギーには常に 「炎症」 が伴うということになります。

様々な研究により、オメガ3脂肪酸が抗炎症作用を持つことは明らかで、この炎症を抑える作用がアレルギー症状の緩和にも役立つと考えられています。

母乳に着目した興味深い研究によると、喘息やアトピー性皮膚炎をもつ母親の母乳は、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率がアレルギーを持たない母親よりも低く、逆に、オメガ3脂肪酸/オメガ6脂肪酸の比が高い母乳を摂取していた子供は、アレルギー症状が出にくい傾向があるようです。
※しかしながら、直接アレルギーを抑制するという明確な結果は出されていません。

なお、最近では、EPA由来の抗炎症作用をもつ物質(リゾルビンE1(Resolvin E1)が見つけられ、腸の炎症や、歯周病に伴う炎症の抑制に対する働きも確認されています。
(Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 May 24;102(21):7671-6.)
(FASEB J. 2006 Feb;20(2):401-3. Epub 2005 Dec 22.)
(Anesthesiol Clin. 2006 Jun;24(2):341-64.)
(J Biol Chem. 2006 Aug 11;281(32):22847-54. Epub 2006 Jun 6.)
(Prostaglandins Other Lipid Mediat. 2004 Apr;73(3-4):155-72.)
(J Allergy Clin Immunol. 2006 Feb;117(2):440-7.)
(J Allergy Clin Immunol. 2006 Apr;117(4):931-8. Epub 2006 Feb 14.)
(Clin Exp Allergy. 2006 Mar;36(3):293-302.)

 まとめ



「頭が良くなる」、「体に良い」 などとして、これまでも漠然とその有効性が伝えられていたオメガ3脂肪酸ですが、積み重ねられた多くの実験結果により、様々な働きが確認されています。
脳のためだけでなく、日々の健康のため、積極的に摂取していきたいですね。
※ただし過剰に摂取した場合、出血傾向になる可能性があるため、抗凝血薬を服用している方などは注意が必要となります。

<参考>
PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=PubMed

オメガ3(EPA/DHA)
http://www.supmart.com/omega3/









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