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関節にも心にも肝臓にも優しい成分
『SAMe』


今回は、関節炎対策や抗うつ、解毒作用など、様々な機能性を持つことが知られ、多くの研究が行なわれている 「SAMe(サミー)」 について掘り下げていきたいと思います。

 SAMeとは



SAMe(S-Adenosylmethionine:S-アデノシルメチオニン)は「サミー」と呼ばれ、体内ではアミノ酸であるメチオニンとATP(アデノシン三リン酸)から作られて体内の全細胞に存在し、さまざまな代謝に関わる物質です。

1952年にイタリアで発見され、ヨーロッパでは1975年からうつ病の治療薬として使用されています。
その後、数十年にわたる多くの研究でSAMeの生化学的、分子学的役割が明らかにされ、多くの臨床試験により、うつ、痴呆、空胞性脊髄症、肝疾患、骨関節炎などに対する有効性をも示唆されています。

米国では、1999年から「気分の落ち込みをサポートするサプリメント成分」として販売され始めましたが、現在では肝臓の健康や関節の健康に役立つ成分としても紹介されるようになっています。

(Am Fam Physician. 2003 Jan 15;67(2):339-44.)
(Am J Clin Nutr. 2002 Nov;76(5):1151S-7S.)


 SAMeの生化学的作用



SAMeは、酵素を介したメチル抱合(メチル基転移反応)における「メチル基供与体」としての働きが最もよく知られていますが、その他の代謝経路にも関わっています。

<SAMeが関係する代謝>

(1)メチル抱合
(メチル基の転移反応)
メチル基供与体として、神経伝達物質の生合成や、薬物の代謝などにも関係。また、細胞膜の安定性と健全性を保つために必要とされるリン脂質の生合成にも関係。
(2)硫酸抱合
(硫酸基の転移反応)
メチル基を与えたSAMeはホモシステインへと変換され、その後、幾つかの段階を経てシステインへと変換される。この一連の代謝の中で生じる硫酸基を他の代謝代謝中間体に供与する。
(3)アミノプロピル化生体内活性物質であるポリアミンの合成に関わる。


SAMeはメチル基を与えた後、循環器系の健康に悪影響を与える因子 「ホモシステイン」に変換されるため、SAMeを多く摂取すると理論上は体内のホモシステイン濃度が高まると考えられています。
こうした点から、SAMeの摂取時にはホモシステインをシステインへ変換する代謝に必要な補酵素、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、ベタインを合わせて摂取することが勧められる場合がありますが、1日1,600mgのSAMeを摂取させた試験で、ホモシステインを含む体に対して有害となるメチル代謝物の濃度上昇は認められなかったという報告もあり、実際にホモシステインレベルに与える影響について配慮する必要があるのかについては議論の余地があります。

(Am J Clin Nutr. 2002 Nov;76(5):1151S-7S.)
(J Am Chem Soc. 1952;74:2942-2943.)
(Pharmacotherapy. 2004 Nov;24(11):1501-7.)


 摂取量



SAMeには明確な摂取量は定められていませんが、豊富な臨床試験の結果をもとに、一般的には下記のような摂取量が目安とされているようです。
なお、SAMeは腸溶性コーティングが施されている剤形のものを、空腹時に摂取(食前1時間前または、食後2時間以上たってからの時間帯)することが勧められています。
  • うつ状態の緩和   400〜1,600mg/日
  • 骨や関節の健康維持 200〜1,600mg/日(複数回に分けて摂取)
  • 肝臓の健康維持   1,600mg/日(複数回に分けて摂取)

 SAMeの働き



SAMeは多くの生体内反応に関わる物質であるため、SAMeに関する文献も非常に多く、生理活性作用や安全性、肝臓、うつ病、関節炎、繊維筋痛症などに対する作用など、PubMed内でも新旧合わせて1,000件を超える文献が登録されています。


○抗うつ作用

SAMeは、下記の図のように脳内の神経伝達物質の生合成に関わっており、多くの臨床試験で抗うつ作用が認められています。

<トリプトファン→セロトニン>

トリプトファン

トリプトファンヒドロキシラーゼ
SAMe、BH4(テトラヒドロビオプテリン)
セロトニン


<チロシン→ドパミン&ノルエピネフリン>

チロシン

チロシンヒドロキシラーゼ
SAMe、BH4(テトラヒドロビオプテリン)
ドパミン
ノルエピネフリン

(Am J Clin Nutr 2002;76(suppl):1158S-61S.)


【SAMeの経口及び筋肉投与でのうつ病に対する有効性と忍容性:2つのマルチセンタースタディでのイミプラミンとの比較】
(Am J Clin Nutr. 2002 Nov;76(5):1172S-6S.)

SAMeは、複数の臨床試験で抗うつ作用があることが報告されいることから、抗うつ薬であるイミプラミンとの有効性と忍容性(※)を調べた。
※物質に有害な作用(副作用)があった際に、その作用が被験者にどれだけ影響を及ぼすかを表す程度。“忍容性が高い”とは、対象の物質に副作用があった場合でも被験者に与える影響が低く、その作用に十分耐えうることを意味する。

【対象】
HAM-D(the 21-item Hamilton Depression Rating Scale:ハミルトンうつ病評価尺度)で、18以上となったうつ病患者。

【試験1:投与期間(6週間)】
1日1600mgのSAMeを経口摂取した143人と、1日150mgのイミプラミンを経口摂取した138人との比較。

【試験2:投与期間(4週間)】
1日400mgのSAMeを筋肉注射によって投与された147人と、1日150mgのイミプラミンを経口摂取した148人との比較。

【結果】
1、2ともに二重盲験法により試験を行い、試験終了時でHAM-DとCGI(Clinical Global Impression Scale:臨床全般印象尺度)スコアを計った。また、MADRSスコア(Montgomery-Asberg Depression Rasing Scale)と、HAM-Dスコアが50%以上低下した者を有効として効果を判定したところ、SAMe1,600mgの経口投与と400mgの筋肉注射によって確認された抗うつに対する有効性は、ともにイミプラミンで確認された有効性に匹敵した。
また、SAMeはイミプラミンに比較して忍容性があり、副作用の発現が少なかった。


上記のイタリアで行われた試験では、三環系抗うつ薬と同等の作用がありながら、副作用が少ないという結果が得られています。
また、下記のハーバードで行われた試験では、うつ病治療薬として主流となっている薬でも十分な効果が得られない患者への新しい治療法の確立についての可能性を示唆しています。


【治療抵抗性うつ病のための補助としてのSAMe:SSRI及びベンラファキシン(SNRI)に対する反応が低い、あるいは無い対象への第III相臨床試験】
(J Clin Psychopharmacol. 2004 Dec;24(6):661-4.)

SSRI、及びベンラファキシンに対する反応性が低い患者に対する抗うつ薬の補助として、SAMeを経口摂取させ、その安全性、忍容性 、有効性について評価した。

【方法】
長期うつ病外来患者30人に、抗うつ薬の補助としてトシル酸SAMeを6週間、800〜1,600mg/日摂取させた。

【結果】
治療を振り分けられた全ての人での分析(Intent-to-treat analyses)をHAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)で行ったところ、50%で反応があり、43%にうつ状態の改善が認められた。
なお、副作用としては胃腸障害と頭痛が認められた対象もいた。

【結論】
SSRIまたはSNRIとSAMeを併用することで、治療抵抗性うつ病患者に対する抗うつ作用が、併用しない場合と比べて高くなることが確認された。


うつ病治療の主流とされている薬でも、十分な効果が得られにくい難治性のうつの治療の補助にSAMeの併用が、治療の効果を高める可能性があることは、今後のうつ病治療に新たな展開を与えるかもしれません。


なお、2000年の4月から11月までACRIA(AIDS Community Research Initiative of America)で行われた、20人のHIV患者のうつに対する臨床試験でも、うつ状態の緩和に対する有効性が認められています。
HIV自体に対する治療が行われていても、HIVに罹患したことによる精神的不安やうつに対する治療が行われない場合、SAMeの摂取は、そういった人たちのQOLを高める助けにもなります。
(BMC Psychiatry. 2004 Nov 11;4:38.)


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○肝臓に対する働き

SAMeは、肝臓での抗酸化物質であるグルタチオン合成に関わることから、肝臓での解毒に対する有効性を示す文献があります。

【SAMeとNACのアミノアセトフェン肝毒性に対する肝保護効果の比較】
(J Pharmacol Exp Ther. 2007 Jan;320(1):99-107. Epub 2006 Oct 25.)

過剰なAPAP(アセトアミノフェン)は、肝臓の小葉中心性壊死を引き起こす。
SAMeは、APAPの肝毒性を減弱させことが報告されていることから、APAPの解毒に対して臨床的に用いられるNAC(N-アセチルシステイン)と、肝臓保護作用に対する有効性を比較した。

【方法】
オスのマウスにSAMeまたはNACを投与する(1.25mmol/kgを腹腔内投与)2つの群に分け、投与した直後に300mg/kgのAPAPを注射し、4時間後に解毒に対する有効性を調べた。

【結果】
上記投与量では、SAMe群での肝臓の重量はAPAPを投与しても変化が無かったが、NAC群では肝臓の重量増加が見られた。
また、SAMe群ではNAC群よりもALT(※)が低く、SAMeの肝保護作用が高いことが確認された。
SAMeの前投与は、肝臓でのグルタチオン(GSH)レベルを、NAC前投与よりも高濃度に保ち、NACよりもAPAPの肝毒性を減弱する働きが高い。

※ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ):肝細胞に存在する酵素。肝臓に障害が発生すると細胞が破壊され、血液中のALT値が上昇する。


【アルコール性肝硬変に対するSAMe:二重盲験クロスオーバー試験(マルチセンタートライアル)】
(J Hepatol. 1999 Jun;30(6):1081-9.)

アルコール性肝硬変の患者123人を、62人にSAMeを1日1200mg、61人にプラセボを2年間摂取させる二重盲験法行った。
なお、患者の肝硬変の程度は、クラスA(最も軽い)が77人、クラスB(中程度)が40人、クラスC(重症)が8人で、プラセボ群との性別、年齢、肝硬変の程度に差はない。

【結果】
試験終了時に死亡又は肝移植に至った者の割合は、対照群30%に対して、SAMeは16%であったが、統計学的な有意差は見出せなかった。
しかし、クラスC群を除いた分析では、対照群の方がSAMe群よりも死亡又は肝移植に至った例がはるかに多く、両群の2年生存カーブには有意差が認められた。

【結論】
SAMeの長期間投与は、軽度のアルコール性肝硬変患者の生存期間、又は肝移植に至るまでの期間を延長する可能性がある。


その他、インビトロ試験ではありますが、C型ウイルス性肝炎に対する標準化治療(インターフェロンとリバビリンを使用)では効果がないタイプのC型肝炎に対し、SAMeとベタインとの併用が標準化治療の効果を高める可能性を示唆する文献もあり、肝臓に対する働きも期待されていますが、アルコール性肝障害に対する働きについては決定的な有効性を示す文献がなく、有効性の立証のためには長期的な臨床試験が必要となっています。

(Hepatology. 2006 Apr;43(4):796-806.)
(Cochrane Database Syst Rev. 2006 Apr 19;(2):CD002235.)


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○関節炎に対する働き

SAMeの関節炎に対する働きは、SAMeのうつ病に対する臨床試験に参加していた患者から、関節炎の症状が顕著に改善されたという報告により見出されました。

インビトロ試験では、軟骨細胞でのプロテオグリカン生合成の増加や軟骨細胞の増殖率を高めることが認められており、SAMeがポリアミンの合成を高めることでプロテオグリカンの安定化にもつながると考えられています。
また、SAMeは、TNFアルファ(炎症誘引サイトカイン)の刺激による細胞損傷が生じた後に細胞の基本状態を回復させる可能性があり、それによる関節炎の症状改善も期待されています。

(Am J Med. 1987 Nov 20;83(5A):48-54.)
(Am J Med. 1987 Nov 20;83(5A):55-9.)
(Br J Rheumatol. 1997 Jan;36(1):27-31.)
(Am J Clin Nutr. 2002 Nov;76(5):1151S-7S.)
(Am Fam Physician. 2003 Jan 15;67(2):339-44.)


【骨関節症の治療に対してのSAMeとセレコキシブの比較:二重盲験クロスオーバー試験】
(BMC Musculoskelet Disord. 2004 Feb 26;5:6.)

1日1,200mgのSAMeと、COX-2阻害薬である非ステロイド性抗炎症薬セレコキシブ(Celebrex 200 mg)を服用させ、関節炎による膝の痛みの減少に対する作用について調査した。

【方法】
1回の試験期間は8週間とし、その後1週間の洗い出し期間を設けて、摂取物を変えて同様の試験を再度8週間行う。

【対象】
40歳以上の膝関節炎患者61人(ただし、試験を終了したのは56人)

【結果】
膝の痛み、行動上の制限、関節機能や膝の強度と可動範囲、精神状態、副作用について調べたところ、第1相試験の最初の月では、セレコキシブ群での痛みの減少度は、SAMe群よりも大きかった。2ヶ月目では、SAMe摂取群でも痛みの減少が見られ、両群に有意差はなかった。
膝関節機能や状態では、SAMe群、セレコキシブ群のどちらでも同様の改善が見られた。
なお、副作用としては胃腸障害、頭痛などが確認されたが、SAMe群の方がセレコキシブ群よりも副作用の発現が少なかった。
これにより、SAMeは効果の発現にはより時間を要するものの、膝関節炎の症状に対して抗炎症治療薬と同等の有効性が確認された。

抗炎症治療薬と比べると効果が得られるまでにはやや時間はかかるものの、関節に対する働きも確かなようです。


 まとめ



体内では、多くの生化学反応に関係するSAMe。
米国国立衛生研究所(NIH)の臨床試験センターでは、C型慢性肝炎や肝臓がん、繊維筋痛症、うつ病など、実に様々な疾患に対する有効性を調べる臨床試験が現在でも実施されています。
http://clinicaltrial.gov/ct2/results?term=S-adenosylmethionine&recr=Open
SAMeは、米国内では、一般的なサプリメントとして流通していますが、その有効性は医薬品に匹敵すると考えられ、上手に利用していくことで、健康維持に極めて有効な成分であると言えるでしょう。


<参考>




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 第9回 オメガ3脂肪酸(後編)
 第8回 オメガ3脂肪酸(前編)
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