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カテゴリページ ・ノニ |
“命の木”とも呼ばれる『ノニ』今回は、古くから世界で親しまれ、今後の科学的利用に注目が集まるノニについて、掘り下げていきたいと思います。 ◆ノニ(Morinda citrifolia)とはノニは樹高3〜6m程に成長するアカネ科の低木で、溶岩台地のような荒れた土地でも育つ強靭な植物です。約30cmの大ぶりの葉が茂り、大人の握りこぶし大のゴツゴツとした果実をつけます。発芽後5年程度で、年に2〜3回、収穫できるようになります。 ノニの果実は、始めは緑色ですが、熟すにつれて白色へと変化していき、独特の臭い(地域によっては“腐ったチーズのよう”とも表現される)を放つようになります。 現在特にこの果実がサプリメントやジュースなどに用いられており、日本でも「スーパーフルーツ」「奇跡のフルーツ」などの呼び声が高い植物です。 原産地はパプアニューギニアやインドネシア近隣であると言われるノニですが、現在は東南アジアやポリネシア、インド、アフリカ、カリブ海地域などの熱帯低地に広く自生しています。ノニが広域で見られるのは、ノニの果実の特徴(性質)と人の介在によるところが大きく、中空で水に浮くノニの果実が海流に乗って流され運ばれたこと、さらに、遠洋航海を実践した古代オセアニアの民族とされる「ラピタ人」によりポリネシア地域にも持ち込まれたことなどが原因として考えられるとされています。 ヨーロッパ諸国には、1760年代にスウェーデンに持ち込まれ、同国の植物学者リンネによって“Morinda citrifolia”という学名は付けられたものの、その後200年以上に渡って特に注目されることはありませんでした。 ノニが世界的に知られるようになったのは1980年代以降。多くの研究者が、ノニに含まれる成分を研究対象として注目し始めてからのことです。 ○ノニの名前 5000年以上にも渡って人類に利用されてきたとされるノニは、世界各地で使用される名称も多様です。 ・ノニ・・・ハワイ、ポリネシア、サモア、プエルトリコ ・パセル・・・インドネシア ・ニノ・・・フィリピン ・クラ・・・フィジー ・チーズフルーツ・・・オーストラリア ・マルベリ・・・カイマン島 ・ヤエヤマアオキ・・・日本 上記のほか、調べた限りでは96個以上もの呼称が存在することからも、多くの地域での利用が裏付けられると言えるでしょう。 (National Center for Complementary and Alternative medicine) (Noni:The Complete Guide,Scot C.Nelson and Craig R.Elevitch) ◆ノニの伝統的および現在の活用方法ノニは、実、葉、根、幹など、ほぼ全ての部位が利用されています。 ○伝統的な活用法と使用部位 【葉】
【果実】
【幹】
【種子】
【根】
【花】
○現在の活用法(主に補完代替医療目的として) 下記のような疾患に対し、主にノニの果汁をジュースとしたものや果汁をカプセルやパウダーにしたものが利用されているようです。 ADD/ADHD、中毒、アレルギー、関節炎、喘息、火傷、がん、心疾患、化学物質過敏症、慢性疲労、糖尿病、消化不良、子宮内膜症、線維筋痛症、痛風、高血圧、免疫力低下、感染症、炎症、時差ぼけ、多発性硬化症、筋肉&関節痛、ポリオ、リウマチ、副鼻腔炎、ペットへの利用など (College of Tropical Agriculture and Human Resources, University of Hawaii at Manoa) ◆ノニの活性成分すべての部位が利用されてきたノニには、様々な生理活性をもつ物質が含まれています。 ○アントラキノン ダムナカンタール:葉・根 前がん細胞とされるK-ras-NRK細胞の働きを抑制する働きがあるという報告があります。 ※Ras遺伝子の変異は、肺がん、大腸がん、膵臓がん、白血病に関係していると考えられています。 1,4-ジヒドロキシ-2−メトキシ−7−メチルアントラキノン:果実・果汁 I型コラーゲンやグリコサミノグリカンの生成量を培養細胞で増加させたことが報告されています。 その他、複数のアントラキノンが見つけられています。アントラキノンには抗菌作用があり、また抗腫瘍活性も期待されていますが、ノニの葉に含まれるモリンジンとルビアジンという2種類のアントラキノンには発がん性があるとされており、ノニの葉を利用する際には注意が必要であると考えられています。 ○多糖類: 果実・果汁 グルクロン酸、ガラクトース、アラビノースなどの多糖類は免疫調整に関与し、抗菌、抗腫瘍などが期待されています。 ○配糖体類: 果実・果汁、葉 アウクビン、アスペルロシド、シトリフォリニンA&Bなどのイリドイド配糖体、フラボノール配糖体には抗酸化作用があり、インビトロ試験では抗腫瘍活性が確認されています。 ○スコポレチン: 果実・果汁 血圧低下作用、抗菌・抗真菌作用、抗ヒスタミン作用、睡眠障害、偏頭痛、抗不安作用などの働きがあると考えられています。 ○アルカロイド ゼロニン:果汁・果実 酵素活性を高める物質として1985年、R.M.Heinicke博士によって発表されました。 (ただし、現在では博士自身を含め、その存在を否定する研究者も多くいます。) (Bulletin of the National Tropical Botanical Garden, 1985) ○その他 リグナン&ネオリグナン、脂肪酸シトステロールなどが確認されています。 (Journal Agricultural Food Chemistry, 49(9):4478-4481, 2001) (Journal Natural Products, 64(6):799-800, 2001) (Bioorg Med Chem. 2003 Jun 12;11(12):2499-502.) (Noni:The Complete Guide,Scot C.Nelson and Craig R.Elevitch) (Cancer Lett 1993; 73: 161-6. PMID: 7693328) (Acta Pharmacol Sin 2002 Dec;23(12):1127-1141) (J Med Food. 2005 Winter;8(4):552-5. PMID: 16379572 ) ◆ノニの研究伝統的使用の有効性の検証や含まれる活性成分の働きについての実証など、様々な側面からノニの研究は行なわれています。 ○抗酸化作用 ポリネシアでは旧来、長い航海にも耐えうる持久力を保つためにノニが使われてきたとされています。この経験的使用の有効性を科学的に検証した報告があります。 【ノニの抗酸化機能による、アスリートの持久力の上昇】 (Joint Northwest and Rocky Mountain Regional Meeting of the American Chemical Society. June 17, 2008. Park City, Utah, USA.) 運動競技は特に行なっていない被験者2人に、ノニジュースを摂取させたところ、肉体的な機能と疲労指数の改善、持久力の大幅な向上がみられた。このことから、ノニジュースの抗酸化活性が抗疲労効果につながったとの仮説の下、下記の検証を行なった。 <方法> 訓練された運動競技者40人(18〜27歳)のうち、20人にポリネシア産のノニジュースを、残りの20人(コントロール群)にブラックベリージュースを、各々1日200ml、3週間摂取させた。 開始0、10、21日目に、トレッドミル(疲労度テスト)、血液検査、尿の化学ルミネセンス分析(酸化度テスト)を指標として評価した。 <結果> 摂取開始21日での結果 ・トレッドミルを用いた疲労測定: ノニ摂取群で、疲労を感じるまでの時間が22%延長し、コントロール群との有意差が認められた。 ・血液検査: ノニ摂取群では変化がなかったが、コントロール群では乳酸値の上昇がみられた。 ・酸化度テスト: ノニ摂取群で、尿中の過酸化脂質が大幅に減少した。 <結論> 肉体的なパフォーマンスの向上やエネルギーの持続は、ノニジュースに配合される抗酸化物質と関連するとの仮説が実証され、ノニのアスリートの持久力向上にも役立つことが明らかになった。 なお、抗酸化効果については、喫煙者の血漿中の過酸化脂質とフリーラジカルに対する保護作用といった観点でも調べられています。 喫煙者に1日60mlのノニジュースを1ヶ月間摂取させ、スーパーオキシドアニオンラジカル(SAR)濃度と脂質ヒドロペルオキシド(LPO)濃度を測定した。その結果、摂取群はコントロール群に比べてSAR濃度が27%、LPO濃度が23%も減少したことが確認され、喫煙による酸化ダメージを防ぐ可能性が示唆された。 (XI Biennial Meeting of the Society for Free Radical Research International, Jul. 16-20, 2002) ○がんに対する効果 ノニが注目される理由に、がん予防に対する働きへの期待があります。がんとの関連性についてはノニの抗酸化、免疫調整、抗炎症といった働きが関係しているのではとする文献がありました。 【ノニのがん予防効果】 (Ann N Y Acad Sci. 2001 Dec;952:161-8.) 予備試験データでは、10%濃度のノニ果実製品を、水とともに、ラットとマウスに1週間摂取させたところ、DMBA※-DNAアダクト(付加体)の形成が抑制されており、雌SDラットにおけるDMBA-DNAアダクト濃度は心臓で30%、肺41%、肝臓42%、腎臓80%減少した。 雄C57BL-6マウスではさらに顕著な結果が報告され、心臓で60%、肺50%、肝臓70%、腎臓90%の減少が確認された。 DMBA-DNAアダクト抑制のメカニズムを解明するために、インビトロ試験で、脂質ヒドロペルオキシド(LPO)とスーパーオキシドアニオンラジカル(SAR)を測定すると、ノニジュースはLPO、SARいずれに対しても、用量依存的に抗酸化活性を示した。 これらの結果から、ノニには発がん物質誘発DNAアダクトの生成抑制と強力な抗酸化活性により、がんを予防する効果がある可能性がある。 ※DMBA(ジメチルベンズアントラセン):発がん誘発化学物質。このDMBAとDNAが結合したものが「DMBA-DNAアダクト」で、発がんリスクのバイオマーカーとなる。 この報告を行なったWANG博士は、米国癌学会と日本の癌学会でも、喫煙における有害物質の発がん作用をノニが抑える可能性があると発表しています。 この他、多糖類の免疫調整、抗炎症作用に関連してもがんを予防する働きが期待できるとしており、ハワイ大学医学部での試験では、ノニジュースに含まれる多糖類高含有物質に、免疫調整因子感受性マウス肉腫Sarcoma-180に対し、予防、治癒効果をもつ可能性が高いことが確認されています。 この試験では、ノニの多糖類高含有物質に、腫瘍マウスで25〜45%の治癒率が認められ、特定のマクロファージ阻害剤(2-クロロアデノシン)、免疫抑制剤(シクロスポリン)、NK細胞抑制物質(抗アシアロGM1抗体)の併用により完全に抑制、また、多糖類高含有物質と化学療法剤のシスプラチン、アドリアマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、エトポシド、5-FU、ビンクリスチン、カンプトテシンの作用に対して、相補的、協調的に働くことが認められ、タキソール、サイトシンアラビノサイド、シクロフォスファミド、メトトレキサート、6-チオグアニンなどの免疫抑制剤の併用では、腫瘍の抑制効果はみられなかったことから、ノニに含まれる多糖類含有物質は、インビボでは、Th1サイトカインを優勢にした免疫機能を誘発することが明らかにされています。 (Phytother Res. 2003 Dec;17(10):1158-64.PMID:14669249) がんに対しての臨床試験 2001年11月に、アメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)の後援の下、ハワイ大学がんリサーチセンターにおいて、がん患者に対する第I相臨床試験が、下記項目の検証を目的に行なわれています。 1. 凍結乾燥させた完熟ノ二フルーツ抽出液500mg含有カプセルの最大許容摂取量の決定 2. ノニ摂取による毒性 3. ノニの抗がん効果と症状抑制に関する情報収集(フェーズ2のため) 4. ノニエキストラクトの化学的成分を特定し、その生物学的利用能や薬物動態の明確化 http://ClinicalTrials.gov/show/NCT00033878 人での臨床試験をNCCAMの後援で実施するということは、ノニの薬効が強く期待されていることの裏づけでもあります。 抗炎症作用と抗がん作用の関係 ラットを用いた試験で、ノニジュースの腹腔内投与、経口投与の両方で抗炎症作用が確認されています。 異なる炎症起因物質を用いても炎症が抑えられていることから、ノニは炎症反応過程で作られる複数の炎症誘発物質の発現を抑制すると示唆されています。 また、近年注目されているシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択的阻害剤に抗がん活性があることが認められており、ノニにも類似したCOX-2選択的阻害作用があることがインビトロ試験で明らかになっています。 代表的なNSAIDsであるアスピリン、インドメタシン、COX-2阻害剤※であるセレコキシブとノニジュースによる試験管レベルでのCOX-1、COX-2阻害作用について調査したところ、ノニジュースにはセレコキシブに匹敵するCOX-2選択的阻害作用があることがわかりました。 なお、COX-2の過剰な反応は、血管形成と炎症反応の増加を引き起こすと考えられていることから、COX-2阻害剤には一般的ながんに対する抑制作用があると考えられています。 ※COX-2阻害剤:非ステロイド性鎮痛剤(NSAIDs)の消化管障害の副作用をなくすために開発された抗炎症薬。 (Proc West Pharmacol Soc., 45:76-78, 2002) (The 7th Annual Conference,2001 Oct 14-17.) (Acta Pharmacol Sin 2002 Dec;23(12):1127-1141) この実験は、ノニの抗炎症作用を科学的に証明した初めてのものであり、ノニの抗炎症作用と併せて、今までとは異なるがんに対するアプローチの1つとして今後注目されるものと思われます。 ○コレステロール低下作用 ノニは、コレステロールを下げる目的でも利用されますが、そのメカニズムについても研究されています。 血液中のコレステロールが増える原因の1つに、肝臓でのコレステロールの合成に関係する酵素の働きが挙げられますが、ノニジュースとラットの肝臓から得られたHMG-CoA還元酵素を用いた試験から、ノニはこのコレステロール合成酵素の働きを用量依存的に阻害することが確認されています。 (The 47th Annual Meeting of Society for Economic Botany, Folk Botanical Wisdom; Towards Global Markets. June 5-9, 2006. Final Program, page 71) また、喫煙者という限られた範囲ですが、第46回米国心臓学術集会で下記の結果が報告されています。 【成人喫煙者におけるノニジュース摂取による総コレステロールと中性脂肪低下作用】 (American Heart Association. Pheonix, Arizona. March 2-5, 2006.) 喫煙者は非喫煙者に比べ、コレステロール値が高い傾向にあることから、喫煙者でのノニのコレステロール低下作用の有効性を検証した。 <方法> 20〜60歳の喫煙者で、薬物治療を行なっていない132人(総コレステロール190mg/dl以上)のうち、男女各13人(計26人)は非ノ二ジュースを(コントロール群)、男性49人、女性57人(計106人)は1日30〜120mlのノ二ジュースを(ノニ摂取群)1ヶ月間摂取し、血中の脂質変化を調べた。 <結果> ノニ摂取群においては総コレステロールと中性脂肪の低下がみられたが、コントロール群ではいずれの値にも大きな変化が認められなかった。 ノニ摂取群
また、被験者のノニ摂取前の総コレステロールでグループ分けしてみると、総コレステロールの値が高いほどノニ摂取によるコレステロール低下率が高く、中性脂肪についても同様の結果が得られた。 <結論> ノニの摂取は、喫煙者における総コレステロールと中性脂肪を低下させることが示唆された。 また、熱帯植物のLDLコレステロールに対する抗酸化抑制と細胞保護作用を調べた研究では、ノニの果実、ノニの葉、ノニジュースには、LDLコレステロールの酸化を防ぐ働きはないものの細胞保護作用はあることが確認され、粥状動脈硬化の予防に対する働きも示唆されています。 (J Biochem Mol Toxicol. 2007;21(5):231-42.) ○その他 ヒトでの試験ではないものの、化学物質や薬などの外因性毒物肝臓保護作用(ラット)、慢性的なストレスを緩和する抗ストレス作用(ラット)、GABAa受容体に結合することでの抗不安作用(インビトロ試験)など、様々な実験が行なわれています。 (Plant Foods Hum Butr.2008 Jun;63(2):59-93.PMID 18317933) (Acta Pharmacol Sin. 2001 Dec;22(12):1084-8.) (Phytomedicine. 2007 Aug;14(7-8):517-22. Epub 2007 Jun 11.385) ◆まとめ健康に対するノニの期待は今も高まりをみせていて、現在では50ヶ国以上の国でノニ関連製品が市場を賑わせています。それに伴い、2001年には400億円であった市場規模が今やその5倍(2000億円)にも達し、ノニを取り巻くヘルスケア関連事業は一大巨大産業へと変貌しつつあります。 ただし、代替医療目的での利用が加速する一方で、医科学的実証研究がそれに追いついていない側面も否めず、正当な知見の蓄積を見守る必要もありそうです。 今後のさらなる検証が期待されます。 <参考>
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