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 ・アムラ(アマラキ)

アーユルヴェーダで最も重要なハーブと位置づけられる
『アムラ』


今回は、インド伝統のハーブで、今後様々な応用が期待できるアムラについて、掘り下げていきたいと思います。

 アムラ(Emblica officinalis)とは



アムラ(学名:Emblica officinalis)は、インド原産のトウダイグサ科の木本植物です。サンスクリット語で「アムラキ(Amlaki)」、英語で「インディアングーズベリー(Indian Gooseberry)」と表記され、日本では「インドスグリ」とも呼ばれます。
アムラの木は、樹高7〜10メートルほどになりますが幹は細く、樹上部に3〜4cmの黄緑色の小さな果実を数珠なりにつけます。インドの熱帯地域ではよく見られる樹木ですが、果実を採取するため、近年では樹高の低い栽培種も多く目にするようになりました。
インド伝承医学「アーユルヴェーダ」では最も重要なハーブの1つとして位置付けられており、その果実は「生命を活性化させ、活力を取り戻す」とされています。アーユルヴェーダの多くのハーブフォーミュラに用いられる伝統のハーブです。
アムラは昔から、健康のシンボル、縁起の良い樹木として尊ばれてきました。ヒンドゥー教の、自然と生物への慈愛の祭り“Amla Navami”では「繁殖と豊穣の象徴」とされ、果実のペーストを含む水がヒンドゥー教の神ヴィシュヌの像に注がれ、アムラの木の下で作られた料理がヴィシュヌに捧げられます。

近年、アムラには多様な薬理活性があるとされ、抗酸化、抗炎症、血栓予防などの作用から循環器系疾患の予防に、また、肝臓保護作用、抗がん作用、抗ストレス作用、滋養強壮作用など、様々な働きが期待されています。


 アムラの用途



アムラの部位のうち、最も良く利用されるのは果実です。

【果実】
サプリメントや食品、お茶、ハーブフォーミュラに用いられています。酸味と苦味があるため、塩や油、スパイスとともにアチャール(ピクルス)にしたり、サラダ、砂糖漬けやジャムなどの食品へと加工したりして利用されています。
なお、原産国インドでは熟した果実を生食するようです。

○アーユルヴェーダのハーブフォーミュラへの利用
紀元前4500年にインドの賢者(リシ)達により体系化されたアーユルヴェーダ。
「生命の知識・科学」を意味する伝統的学問で、古代ギリシャやイスラム医学、チベット医学にも影響を与えたと言われ、現在でも、インドの人々の生活全般に大きな影響を与えています。
アーユルヴェーダでは、アムラは全身の組織に作用し、生体組織の活性化、歯茎出血の止血、視力改善、骨の再生、歯、髪、爪の強化、白髪防止、血糖値調節、胃腸の炎症軽減などへと使用され、さらに以下のフォーミュラにも用いられます。

<トリファラ(Triphala)>
アーユルヴェーダの代表的な3種類の果実(アムラ、ビビタキ、ハリタキ)を組み合わせたフォーミュラ。便秘、下痢、消化不良などの消化器症状の改善や痛風性関節炎の緩和に服用され、創傷治療の軟膏などにも用いられているようです。
一般的に、トリファラ1回量には300〜500mgのアムラが配合されています。

<チャバンプラシュ(Chyawanprash)>
アムラをベースに40種類以上のハーブエキスと蜂蜜を加えた「ラサヤナ“rasayana”:優れた作用をもつ薬草処方」。酸味と甘味がある黒色のジャムのような食品で、パンに塗ったり、ジュースに混ぜたり、食後にスプーン1杯程度を食べたりと、非常にポピュラーな加工食品です。滋養強壮、エネルギーの向上、ビタミンC補給など、健康増進目的に用いられ、代表的なチャバンプラシュには100g中に15gのアムラが含まれています。
一般的な食品として利用されていますが、コレステロールや血糖値をコントロールする働きが確認されています。
(Indian J Physiol Pharmacol. 2001 Jan;45(1):71-9)

○単体での利用
サプリメントとして利用される場合、乾燥果実重量で1日に0.5〜6g程度が摂取されています。

○美容に
乾燥果実を水で浸したものやその浸出液がシャンプーやリンスに配合されています。また、乾燥果実粉末にインディゴとへナを混ぜたものが染毛剤として利用されています。
その他、乾燥果実粉末のフェイシャルスクラブ、浸出液を利用した保湿剤など、多岐に応用されているようです。

【果実以外】
葉や樹皮をグレーや黒のインキとして、また幹の部分を黄色や茶色の染色として利用します。また、タンニンを多く含む未熟果実や樹皮は、染色の色止めにと利用されます。
その他、抗炎症作用がある葉の水抽出液が肌や口腔内の洗浄に用いられ、さらに抗酸化作用を期待して日焼け止めへも利用されています。
(Skin Pharmacol Appl Skin Physiol. 2002 Sep-Oct;15(5):374-80)


 アムラの果実に含まれる成分



乾燥させたアムラの果実には、タンパク質、脂質、カルシウム、リン、鉄などのミネラル、カロテン、ビタミンB、ビタミンC、食物繊維、糖質が含まれることが確認されています。さらに最近、ビタミンCよりも強い抗酸化作用があることが確認されている「β-グルコガリン」と「Mucic acid 1,4-lactone 5-O-gallate」という成分が発見されています。
なお、本来アムラの果実にはビタミンCが極めて多く含まれると考えられてきましたが、実際には0.4%(100g中400mg)程度で、アムラ果実の示す高い抗酸化活性は、ビタミンCではなく上記の2成分に起因するものと考えられています。
(J Agric Food Chem. 2009 Jan 14;57(1):220-5)
(Phytother Res. 2009 Jan 27.)
(J Ethnopharmacol. 2006 Mar 8;104(1-2):113-8.)


 アムラについての研究



様々な薬効があるとされるアムラは、最近の研究でも健康に役立つ働きが確認されているので、いくつかみてみましょう。

○脂質改善作用
アムラには、脂質改善作用があることが確認されています。
ウサギやラットなどの動物試験では、アムラエキスの摂取量に比例してコレステロール低下作用が高くなり、総コレステロール、遊離コレステロール、LDLコレステロールの全てを減少させ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)値は上昇させることが確認されています。

【人の脂質異常症における標準化アムラエキストラクトの働き】
(Indian Journal of Pharmaceutical Sciences 2008;70(4):504-507)
アムラの脂質異常症に対する有効性を確かめるため、下記の条件でアムラの脂質に対する働きを調べた。

<方法>
対象:総コレステロール値が240mg/dl以上の15人(アムラ摂取群)と、総コレステロール値が200〜240mg/dlの15人(コントロール群;非摂取群)
両群に4ヶ月間、標準化アムラエキストラクト500mg(エラジタンニン30%含有)と低脂肪食を摂取させ、運動を励行させた。
<結果>
アムラ摂取群:総コレステロール値が17%、LDLコレステロール値が21%、中性脂肪値が24%低下し、HDLコレステロール値は14%上昇した。
コントロール群:コレステロール値に変化はなく、HDLコレステロール値がわずかに低下した。
<結論>
今までの動物試験による結果からも、アムラのコレステロール低下作用はコレステロール合成に関わるHMG-CoA還元酵素阻害作用によるものと考えられる。また、HDLコレステロールの増加は、コレステロール合成時、LDLからHDLへのコレステロール輸送に関与する酵素が活性化されたためと考えられる。


2007年の日本栄養・食糧学会大会では、日本の企業からも、アムラの内臓脂肪蓄積予防に対する有効性が報告されています。
(Indian Journal of Pharmaceutical Sciences 2006;67(4):437-441)
(J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2005 Dec;51(6):413-8.)

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○抗酸化作用
アムラの抗酸化活性はビタミンCよりも高いことが示されましたが、既に動物やヒトでの試験で、その有効性が実証されています。

STZ誘発糖尿病ラットによるアムラの抗酸化特性の検証では、アムラは強い抗酸化活性を示しています。アムラの摂取によって、糖尿病ラットの血中の様々な酸化ストレスの指標が改善され、さらに酸化ストレスの軽減で糖代謝が改善されています。
また、インドメタシンによる胃潰瘍誘発ラットにアムラを摂取させたところ、胃粘膜での粘液と胃粘膜糖タンパク(へキソサミン)の分泌の促進、潰瘍の浸潤が抑えられ、アムラの抗酸化作用が粘膜細胞に影響していると考えられています。

ヒトでの臨床試験では、体内での抗酸化効果も示唆されています。
4ヶ月間、アムラエキストラクトを尿毒症期の腎不全患者に摂取させた試験では、血中の酸化ストレスマーカーが減少し、抗酸化能(TAS)が上昇しました。
なお、肝機能(GOP、GPT)、腎機能(クレアチニン、尿素窒素、尿酸)、糖尿病指数(血糖、アディポネクチン)、動脈硬化指数(LDL/HDL比、総コレステロール、ホモシステイン)には大きな変化はなく、アムラエキストラクトは、肝臓や腎臓といった臓器や血管に影響を与えず、血中の酸化ストレスを低減する可能性が示されています。
(J Med Food. 2005 Fall;8(3):362-8.)
(J Ethnopharmacol. 2000 May;70(2):171-6)
(Am J Chin Med. 2009;37(1):19-25.)

近年増加が叫ばれる酸化ストレス。様々な疾患や老化の原因にもなることから、アムラによる酸化ストレスの低減はそれらの予防に役立つかもしれません。

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○抗菌作用
伝統的に喘息、歯茎からの出血、風邪、慢性的肺疾患などに用いられているアムラには、抗菌作用があることも確認されています。

日和見感染として院内感染の原因となる 肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対するアムラの活性を調べた試験では、インビトロ、インビボの両試験で抗菌作用が認められ、菌に感染させたマウスの餌に30日間アムラを混ぜて与えたところ、細菌の死滅が確認されました。この作用はアムラに含まれるエラグ酸などのポリフェノールによるものと考えられています。
また、アムラの水抽出液と煎じ液では、大腸菌、肺炎桿菌、臭鼻症菌(K.ozaenae)、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、チフス菌、 パラチフスA菌、パラチフスB菌、セラチア菌など、計345種の菌に対する抗菌活性があることが調べられています。

その他、皮下組織まで細菌感染した創傷に、アムラを含むトリファラエキストラクト10%を含む軟膏を塗布したところ、抗菌作用とともに肉芽形成の促進も確認されています。
(Pak J Pharm Sci. 2007 Jan;20(1):32-5.)
(J Surg Res. 2008 Jan;144(1):94-101. Epub 2007 Jul 27.)

その他、動物実験段階ではありますが、糖尿病や胃潰瘍、また、抗炎症やがんに対する有効性などを期待する報告もあります。
(Mol Vis. 2004 Mar 12;10:148-54.)
(Phytomedicine. 2002 Sep;9(6):515-22.)
(Cancer Lett. 2006 Jan 18;231(2):206-14)


 まとめ



アーユルヴェーダではなくてはならないアムラ。
健康に対する有用性が科学的に確認されつつある今、健康に役立つ新しい素材としての可能性を大いに秘めたハーブと言えるでしょう。
さらなる研究を待つ必要はありますが、健康維持と不調改善をサポートするハーブとして、今後上手に活用していきたいものです。


<参考>




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 INDEX


 第24回  L-カルノシン
 第23回  アムラ
 第22回  紅麹
 第21回  ノニ
 第20回  ビオチン
 第19回  チャデブグレ
 第18回  ルテイン
 第17回  SAMe(サミー)
 第16回  アサイー
 第15回  ロディオラ・ロゼア
 第14回  アストラガルス
 第13回  ユッカ
 第12回  ベタイン(TMG)
 第11回  アンドログラフィス
 第10回  アシュワガンダ
 第9回 オメガ3脂肪酸(後編)
 第8回 オメガ3脂肪酸(前編)
 第7回 マテ
 第6回 5-HTP
 第5回 ドンクアイ
 第4回 フェンネル
 第3回 DHEA
 第2回 ボズウェリア
 第1回 ヒューペリジンA

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