関連ページ


 カテゴリページ
 ・ぐっすりサポート
 ・リラックス・抗ストレス
 ・5-HTP・セロトニン

セロトニンの前駆体として心と身体を助ける『 5-HTP 』


第6回の今回は、気持ちが落ち込んだり、眠れなかったりしたときに利用されるサプリメントの代表ともいえる「5-HTP」について掘り下げたいと思います。

 5-HTPとは



5-HTP(5-Hydorxytryptophan:5-ヒドロキシトリプトファン)は、体内では必須アミノ酸のL-トリプトファンから作られるアミノ酸の一種で、体内で様々な働きをもつセロトニンの前駆体です。(図1)

[図1]  トリプトファンからセロトニン、メラトニンまで

トリプトファン
  ↓
5-HTP
  ↓    ←  芳香族アミノ酸脱炭酸酵素
セロトニン
  ↓
(N-アセチルセロトニン)
  ↓
メラトニン

5-HTPは、バナナ、トマト、プラム、アボカド、ナス、クルミ、パイナップルなどの食品にもわずかに含まれていますが、サプリメント原料としては、主として西アフリカ原産のマメ科の植物、Griffonia simplicifoliaの種子抽出物が使用されています。
セロトニンへと代謝される5-HTPは、セロトニンが関係すると考えられる様々な病態(偏頭痛、うつ、不安、繊維筋痛症、不眠、肥満、高血圧など)への効果に対する期待から、実に30年以上も前から研究が行われており、既に下記のような目安量の指標が形成されるに至っています。

<摂取量の目安>
  ・不安やパニックなど・・・1日3回  1回50〜100mg
  ・慢性的な痛み・・・1日に200〜400mg
  ・気持ちの落ち込み・・・1日3回  1回100mg
  ・繊維筋痛症・・・1日3回  1回100mg
  ・不眠・・・就寝30分前に100mg
  ・偏頭痛の予防・・・1日3回  1回100mg
  ・体重減少・・・1日3回  1回100mg(空腹時に摂取)

なお、イタリアとアメリカでは、気持ちの落ち込みや不眠のサポート、過剰な 食欲抑制などを目的としたサプリメントとして販売されています。

 セロトニンとは



芳香属アミノ酸脱炭酸酵素によって代謝された5-HTPは 「セロトニン」 になります。
セロトニンは、生体内では様々な働きをもち、体内では 「生理活性物質」 として、脳内では 「神経伝達物質」 としての働きをもちます。

○体内のセロトニン
体全体に存在するセロトニンのうち、90%は消化管粘膜の細胞に、8%は血小板に貯蔵されています。
これらの組織に存在するセロトニンには、下記のような生理作用があります。

・交感神経興奮などにより、動脈血管が強く収縮した状態では拡張させ、弛緩した血管は収縮させる。
・静脈を収縮させる。
・小腸、気管支、子宮、胃、尿管などの平滑筋を収縮させる。

○脳内のセロトニン
先述の通り、体に存在するセロトニンのほとんど(約98%)は脳以外の組織にありますが、残りの約2%は下位脳幹部の縫線核のセロトニン合成細胞に存在しています。

血中のセロトニンは、血液脳関門を通過できないため脳に入ることは出来ず、脳で必要とされるセロトニンは脳内で作られています。
※なお、セロトニンの前駆体である5-HTPは、血液脳関門を通過できるため、脳に到達した5-HTPはセロトニンへ代謝されます。
これは5-HTPの有用性を考慮する上で重要な点です。

脳内のセロトニンは、神経伝達物質の1つとして睡眠、体温調節、摂食、神経内分泌、認知、記憶、生体リズムなど、さまざまな生理機能に関係しており、現在では、脳内のセロトニン量がうつ病などを含め様々な精神疾患に関係していると考えられています。

 5-HTPの研究



先述の通り、脳関門を通過できる5-HTPは脳内のセロトニン量の増加に関係すると考えられ、30年以上にわたって様々な研究で用いられています。
特に、セロトニン量が関係するとされる病態に対する働きを研究している文献は数多く見られます。

○うつ症状に対する働き
1970年代に、5-HTPの投与がうつ病に対して有効性があることが確認されて以来、脳内セロトニン量と精神疾患との関連が研究され、SSRI(Selective SerotoninReuptake Inhibitors:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの脳内神経細胞間隙のセロトニン量を増加させる医薬品の開発へとつながりました。
5-HTPそのものには、SSRIのような働きを期待することは難しいですが、「医薬品の副作用として現れるうつ」 に対する効果を期待する文献もあります。

【INF誘発うつに対する5-HTPとSSRI:シナプス間セロトニン合成のメカニズム】
(Med Hypotheses. 2005;65(1):138-44.)
ガン、ウイルス感染、C型肝炎などの治療に用いられるINF(インターフェロンアルファ)は、その副作用としてうつ症状を誘発する。このうつ症状の改善のためにSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)が用いられるが、63〜75%程度に対しての有効性が確認されているに過ぎない。
INFは、脳内のシナプス間でのセロトニンの再取り込みを増加させ、細胞内のセロトニン産生を低下させる。細胞内セロトニンレベルが減少している場合、SSRIだけを用いても、抗うつ作用が期待できない。
5-HTPの経口摂取は、医薬品誘発ではないうつに対する効果があることを示す、数多くの臨床試験がある。
セロトニン取り込み阻害作用のあるSSRIと、セロトニンの前駆体5-HTPを摂取することは、インターフェロンによって誘発されるうつ症状に対する働きがあると推定できる。

まだ推定段階ですが、SSRIだけでは効果が期待できない医薬品の副作用に対して5-HTPが効果を持つかもしれないという点は、大変興味深いです。

【経口摂取での5-HTPのセロトニン、メラトニン、免疫に対する効果】
(Mol Cell Biochem. 2004 Dec;267(1-2):39-46.)
ラットを用い、朝(8時)に摂取するグループ、夜(20時)に摂取するグループとに分けて、5-HTPを1回300mg経口摂取させた。
セロトニン、メラトニン、マクロファージレベルを調べたところ、朝に与えた場合、脳内の5-HTPとセロトニンの増加が認められた。
一方、夜に与えた場合は、脳内のセロトニンは減少したが、メラトニンと免疫活性を示すマクロファージは増加が認められた。
これにより、5-HTPの経口摂取は脳内のセロトニン、メラトニンレベルを高める働き、及び免疫機能を調節する働きがあると考えられる。

上記文献では、経口摂取された5-HTPが脳に到達し、セロトニンへと変換されることが確認されています。
また、摂取タイミングによっては、セロトニン以外の物質への代謝、免疫機能の調節にも関係していることが確認されたということになります。

かつては、5-HTPを経口摂取してもその多くが脳に到達する前に代謝されてしまうため、経口摂取された5-HTPが脳内セロトニンレベルの向上に対して有効に働く可能性はほとんどないと考えられていました。
しかし現在では、5-HTPだけを摂取しても、脳内のセロトニンレベルが高まるとされ、うつ、パニック障害やその他の病態に対する働きが期待できるとする文献もあります。
(J Psychiatry Neurosci. 2003 Nov;28(6):471.)
(Psychiatry Res. 2002 Dec 30;113(3):237-43.)
(Psychiatry Res. 1990 Mar;31(3):267-78.)

○食欲抑制と食後高血糖に対する働き
上記のような 「うつ症状」 に対する働きの他、ストレス下の食欲亢進状態における 「食欲抑制」 に対する有効性を示唆する文献もあります。

【5-HTPは、食餌制限とストレスを与えたラットに対し、食欲を抑制する】
(Pharmacol Biochem Behav. 2004 Jan;77(1):137-43.)
5-HTPは、経口で摂取しても脳以外で代謝されてしまうため、脳でのセロトニン産生に対する働きはないと考えられていたが、食欲を亢進させるストレス〔食餌制限と標準的なストレス(尻尾をピンチではさむ)〕を与えたラットに5-HTPを摂取させたところ、食欲が抑制されることが確認された。

【肥満女性での摂食行動に対する5-HTPの経口摂取効果】
(J Neural Transm. 1989;76(2):109-17.)
BMIが30〜40の肥満女性19人に対し、経口摂取5-HTPが摂食行動、気分状態、体重減少に対する効果を調べるクロスオーバー試験を行った。
5-HTP(8mg/体重kg/日)かプラセボを5週間、摂取させ、気分状態を調べるテスト、3日間の食事に対する記録を確認したところ、気分に対する作用はないが、食欲が抑えられていた。その結果、調査期間中の食事量と体重の減少が認められた。

上記の、ラット及びヒトでの実験により、まだ、実証が不完全な点は残りますが、ストレスが原因となる 「過食」 を抑える作用については期待できそうです。
この働きには米国国立衛生研究所も注目しているようで、肥満者の食欲抑制作用を評価する臨床試験が行われようとしています。
http://www.clinicaltrials.gov/ct/show/NCT00328913?order=1

その他、糖尿病や動脈硬化疾患のリスクともなる 「食後高血糖」 に対する働きを示唆する文献もあります。

【門脈への5-HTPの注入による糖処理の向上】
(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2005 Aug;289(2):E225-31. Epub 2005 Mar 8.)
セロトニンをイヌの肝門脈に注入すると、肝臓での糖の取り込みが高まるが、同時に他での糖取り込みが低下し、消化器症状や下痢などを引き起こすことが多くある。
5-HTPの場合、肝臓での糖の取り込みを高めるが、他での糖取り込みに対する作用はなく、消化器症状なども出現しないことから、食後高血糖の抑制に有用となる可能性がある。

最近の研究では、食後高血糖は糖尿病だけでなく、動脈硬化などの循環器系疾患のリスクを高めると考えられています。 5-HTPは、そういった疾患に対しても何らかの働きがあるかも知れません。

 まとめ



セロトニンの前駆物質 「5-HTP」。
脳内セロトニンレベルの調節に役立ち、セロトニンが関係するさまざまな体調不良に対する働きが期待できそうです。

しかし、摂取した5-HTPの全てが脳内でセロトニンへと変換されることはなく、その多くは、胃腸や肝臓で代謝されます。
5-HTPを過剰に摂取した場合、それらの臓器での副作用にもつながる危険性もあります。メーカーや医師によって定められた用法用量を守って適切に使用し、心と体の健康維持に役立てたいところです。

<参考>
PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=PubMed

5-HTP
http://www.supmart.com/search/?cid=5htp